#140 「よいとまけ」体験
【福井尚子・高志】
先月のことになりますが、お隣の大磯町で「よいとまけ」に参加してきました。
「よいとまけ」とは、家を建てる際に、基礎となる地面を固めるための地突き作業のこと。現在は、コンクリートで基礎を作ることが多いそうなのですが、突き固めた地面に礎石を据え、その上に柱を立てる今回のやり方は「石場建て」という伝統構法で、特に関東ではかなり珍しい手法だそうです。
今回は、同じ団地に住むチョウハシさんが所属されている株式会社杢巧舎(もっこうしゃ)さんが、この構法での新築を担当されるということで参加者を広く募集していたのを見て、家族で参加してみました。
「よいとまけ」では、木枠に吊り下げた太い丸太を重しとして、引き上げては地面に突き落とす、を繰り返します。私たちが参加したのは、礎石を地面に突き固める前の、地面を踏み固める段階で、丸太で何度も何度も地面を突きました。
写真のように、参加者が息を合わせてロープを引き、丸太を持ち上げては地面に突き落とすのですが、面白いのは、数え唄を歌いながら作業を行うこと。
真ん中に立つ人(狙った場所を突き固めるために、丸太をコントロールする人)が歌い手となって数え唄を歌い、他の参加者は「よいしょ〜」とリズムを合わせます。数え唄は、以下のように一から十まであり、これを何度も何度もみんなで繰り返し歌いました。
一、物のはじめを「一」と言う
二、肩に担ぐを「二」と言う
三、女の大役「三」と言う
四、子供の小便「四」と言う
五、白黒並べて「五」と言う
六、泥こね回すを「六」と言う
七、物を預けて「七」と言う
八、飛んで刺すのを「八」と言う
九、物事くよくよ「九」と言う
十、焚き火に小便「十」と言う
親方は流石の唄声で、参加者を魅了。終わった後も、頭の中でこの数え唄がずっとループしてしまう、何とも不思議な唄でした。
数多くの大工さんや施主さんのお友達など、たくさんの方が順番に参加されていて、地面を固めるだけでも、本当に多くの方の力が必要であることを体感できました。
「よいとまけ」は、互助的に行う協同労働である「結」の精神を体現したものだそう。おそらく昔は、地域のみんなで、みんなの家を造る。自分の家造りを手伝ってもらう代わりに、みんなの家造りを手伝う。そんな助け合いが当たり前に行われていたのでしょう。
伝統的な家造りの一端に触れることで、現代では忘れられがちな互助の精神の大切さを思い出す。そんな豊かな時間を過ごすことが出来ました。
参考:よいとまけの参加者募集ポスター
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